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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
「それは特に貴下のような特別の職業に従事している人に限って発達している一種の能力で、我々は及びもつかぬ事でしょう」
と云う。そこで私が追っ蒐けて、
「いやそうでないのです。凡ての生命あるものは皆、この能力を持っているものです。私共にだけあって貴方がたにないという理窟はありませぬ。この宇宙間には眼で見え、耳で聞え、鼻に匂い、舌で味われ、手で触れられるもの以外に、まだまだ沢山の感じられ得るものがあるのです。下等な動物は五官の作用を持たないままに、そんなものを直覚して生活しているのです。それがだんだん高等な動物になって、手が生え、舌が出来、眼が開き、耳が備わって来るにつれて、そんな五官の作用ばかりをたよりにするようになって、ほかの直覚作用を信じなくなって来るために、そんな作用がだんだん退化して来るのです。殊に文明人となると、五官の働きを基礎とした学問や常識ばかりをたよりにして電信電話以外に遠方の事はわからない。X光線以外に物は透かして見えない。指紋足跡の鑑識と、三段論法式の推理と、三等訊問法以外に犯罪の探偵方法はない……と固く信じているために、これ程に明白な第六感の存在を首肯する事が出来ないのです」