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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
女の言葉は急に沈んで来た。そうして又も悲しそうにうなだれてしまった。
名優……名優と、私は又しても心の中で讃嘆せずにはいられなかった。その言葉つき……その態度……その着物のなよやかな襞までも、実にしっくりと情をうつしていて、だしに使われている赤の他人の私までも、他に身より頼りのないこの女と、その叔父さんなる者の淋しい生活を気の毒に思わせられた位である。
まして御同様に赤の他人の、何も知らないストーン氏が、どうして心を動かさずにいられよう。まったくの初対面の美少女に対して、あまりに詮索がましく尋ね過ぎた事を、心から後悔したらしく、如何にも済まない顔になって、ハンカチで鼻や口のまわりを拭いていたが、やがて内衣嚢から名刺入れを出して、その中の一枚を自分で来たという証拠に折り曲げて、女の前の丸卓子の上に載せた。そうして詫びるような口調で云った。
「……どうぞ……どうぞ失礼御免なさい。私は自分の名前をまだ申しませんでした。そしてお嬢様に大変な失礼な事をお尋ねしました。これは私の名刺です。バード・ストーンと申します。叔父様がお帰りになりました時に見せて下さい。