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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

だから、むろん女もストーン氏も気付かなかったらしく、ストーン氏は腰をかけたまま盛んに帝国ホテルと話し出したが、その言葉は忽ちの中に下等な亜米利加人特有の粗暴、下劣を極めた方言に変って行った。こうした方言は亜米利加人でも聞き分け得ない者が多いのだから、ストーン氏は誰にもわからないつもりであったらしい。かくいう私とてもこの一二年の間横浜に行って、下級船員を捕まえて研究していなかったならばチンプンカンプン聞き取り得なかったであろう。

「……もしもし……帝国ホテルですか……ヘロウ。ハドルスキー。どうしたんだ。なに。俺を探していたとこだ。どうしてここに居る事がわかった。志免の野郎に会って話を聞いたあ。うんうん。まだサヤマの野郎帰えらねえよ。そこにゃ誰も居ねえのか。うん手前一人か。カルロ・ナインはどうした。もう寝ている。スタチオは? 二人とも出かけたあ。なにい。本牧にいい賭場を見付けたあ。仕様のねえ奴だな。女郎どもはどうした。四五人成金のお客が付いた? はははは。ほかのは散歩している。うむ。寝てるのも居る。うんよしよし。俺あ今日横浜へ行ったんだ。なあに。例の船の用事よ。