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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
難し。而して前課長狭山九郎太氏は、この曲馬団の渡来以前に逸早くこの曲馬団の内容を看破し、総監室に於て総監と高声に激語し合いたる事実あり。同室内の反響甚しかりしを以て詳細の点は聴取し難かりしも狭山課長が日本の某国に対する軟弱外交を非難罵倒せるに対し、総監が極力これを説服せむと試みたるは事実なり。そして狭山課長はその翌日辞表を提出したるものなるが、その後本紙上に於て屡々報ぜし通り、××協商が行悩みとなり、吾国の国防と外交が極度の孤立屏息状態に陥りおりたる折柄、突如としてかかる対×国外交の硬化を象徴する事件の勃発を見たるは右××協商の経過が、外電報ずるところの愛蘭の独立に関する英米関係の悪化に影響せられて好転し、国防基礎を確立したるものと見るべき理由ありと観測せられつつあり。
狭山氏は今朝より不在
留守宅には盛装の二婦人
因みに前記の如く、今回の事件に大関係ありと目さるる狭山九郎太氏は今朝来いずれへか外出しおり柏木の自宅には親戚と称する盛装の二婦人が留守居して長閑に紅茶を啜りおるのみ。事件の勃発を全然関知しおらざるものの如し。【狭山註――以上号外原文のまま挿入】