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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
その女の靴の痕と、お前の新しいゴム底の靴の跡とがハッキリと残っているのだ……嘘を云うと承知せぬぞ」
ボーイは殆んど雷に打たれたように、うしろの方へ辷り倒れかけた。それをやっと踏み止まって真青になったまま助けを乞うように私を見上げたが、その唇は物を云う事が出来なかった。そうして中気病みのようにわななく手を左のポケットに突込んで、新しい手の切れるような二十円札を一枚、私の前に差し出した。
私は受け取って裏表を改めながら問うた。
「お前はこれをその女に貰って口止をされたんだろう……妾がここへ来た事を誰にも云ってくれるな……と云って……」
ボーイは頭をぎくぎくと左右に振った。
「……ち……違います。そ……それを玄関で……も……貰っ……て……」
「……ウン……そうか。そうして岩形さんの室まで案内したんだな……誰にもわからないように……」
ボーイは一つうなずいたと思うと、そのまま頭を上げなかった。ウーンと云って引っくり返ってしまった。
ボーイが杉川医師の応急手当を受けて室を運び出されると、私は直ぐに金丸刑事を呼んで、ボーイが貰った二十円札を東洋銀行に持って行かせた。