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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

一寸行って見ます」

私はちょっとの間眼に見えないものを取り逃がしたようにいらいらしたが、すぐに落着いて答えた。

「……どうか……もし意識がたしかになっているようでしたら今些し問いたい事があります」

杉川医師は首肯きながらすぐに室を出て行ったが、その足音が廊下に消え去ると間もなく、隣の室の卓上電話が突然にけたたましく鳴り出した。

私はすぐに飛んで行って受話器を外した。

「……もしもし……もしもし……貴方はステーションホテルですか。十四号室に居られる狭山さんを……」

「僕だ僕だ。君は金丸君だろう」

「あ。貴下でしたか……では報告します」

「銀行から掛けているのかね」

「そうです。報告の内容はここに居る人が皆知っている事ばかりです」

「ああいいよ。どうだったね」

「意外な事があるのです。この銀行から岩形氏の金を受け取って行ったのは岩形氏自身ではありません。岩形氏の小切手を持った日本婦人です」

「ふむ。それでやっとわかった。そんな事だろうと思った」

「……はあ……私は意外でした」

「まあいい……その婦人の服装は……」

「……思い切った派手なもので、しかも非常な美人だったと云うのです。