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あらしのなか

暴風雨の中

山本 周五郎

「週刊朝日新秋読物号」朝日新聞出版、1952(昭和27)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,339 字 · 30 页

青空文庫

「まったくだ、おれもそう思うぜ」

三之助は歯をみせて笑った。

「そういうやつらは」と男は憎にくしげに云った、「てめえの能無しを棚にあげて世間を怨むんだ、まっとうに暮している者や金持を憎んで、てめえが食えねえのはそういう人たちのためだなどとぬかす、そうしてしめえにゃあ悪事をはたらくようになるんだ」

「そのとおりだ、おめえの云うとおりだぜ、親方」

「てめえおれを笑うのか」男は辱しめられでもしたように嚇となった、「さんざっぱら世間に迷惑をかけて、女を幾人も泣かして、しまいにゃあ人をあやめさえしながら、てめえは自分が悪かったとは思っちゃあいねえんだろう」

「善いとも思っちゃいねえよ」

「自分が悪いとはこれっぽっちも思っちゃあいねえんだろう」

「善いとも思っちゃあいねえさ、本当だぜ親方」三之助は云った、「おれが仁兵衛をやったのは善いことたあ思わねえ、悪いことかもしれねえ、そいつはなんとも云えねえが、おらあやらずにはいられなかった」

「なんとも云えねえって」

「そうなんだ、おれは仁兵衛を短刀でやったが、あの爺いはおれが短刀でやった以上のことを、金と強欲でやってたんだ」三之助の唇が歪んだ、「あの爺いは家主としても鬼のようなやつだったが、そのうえ法外な高利貸をして、貧乏人の血をしぼるようなまねをしていた、あいつのために娘を売った者、親子