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あけみのうた

曙覧の歌

正岡 子規

「日本」日本新聞社、1899(明治32)年3月22日~24日、26日、28日、30日、4月9日、22日~23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,667 字 · 26 页

青空文庫

余の初め歌を論ずる、ある人余に勧めて俊頼集、文雄集、曙覧集を見よという。それかくいうは三家の集が尋常歌集に異なるところあるをもってなり。まず源俊頼の『散木弃歌集』を見て失望す。いくらかの珍しき語を用いたるほかに何の珍しきこともあらぬなり。次に井上文雄の『調鶴集』を見てまた失望す。これも物語などにありて普通の歌に用いざる語を用いたるほかに何の珍しきこともあらぬなり。最後に橘曙覧の『志濃夫廼舎歌集』を見て始めてその尋常の歌集に非ざるを知る。その歌、『古今』『新古今』の陳套に堕ちず真淵、景樹の臼に陥らず、『万葉』を学んで『万葉』を脱し、鎖事俗事を捕え来りて縦横に馳駆するところ、かえって高雅蒼老些の俗気を帯びず。ことにその題目が風月の虚飾を貴ばずして、ただちに自己の胸臆をくもの、もって識見高邁、凡俗に超越するところあるを見るに足る。しこうして世人は俊頼と文雄を知りて、曙覧の名だにこれを知らざるなり。

曙覧の事蹟及び性行に関しては未だこれを聞くを得ず。歌集にあるところをもってこれを推すに、福井辺の人、広く古学を修め、つとに勤王の志を抱く。松平春岳挙げて和歌の師とす、推奨最つとむ。