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あけみのうた

曙覧の歌

正岡 子規

「日本」日本新聞社、1899(明治32)年3月22日~24日、26日、28日、30日、4月9日、22日~23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,667 字 · 26 页

青空文庫

〔『日本』明治三十二年三月二十六日〕

『古今集』以後今日に至るまでの撰集、家集を見るに、いずれも四季の歌は集中の最要部分を占めて、少くも三分の一、多きは四分の三を占むるものさえあり。これに反して四季の歌少く、雑の歌の著く多きを『万葉集』及び『曙覧集』とす。この二集の他に秀でたる所以なり。けだし四季の歌は多く題詠にして雑の歌は多く実際より出づ。『古今集』以後の歌集に四季の歌多きは題詠の行われたるがためにして世下るに従い恋の歌も全く題詠となり、雑の歌も十分の九は題詠となりおわりぬ。曙覧の歌すら四季のには題詠とおぼしきがあり、かつ善からぬが多し。題詠必ずしも悪しとに非ず、写実必ずしも善しとに非ず。されど今日までの歌界の実際を見るに題詠に善き歌少くして写実に俗なる歌少し。曙覧が実地に写したる歌の中に飛騨の鉱山を詠めるがごときはことに珍しきものなり。

日の光いたらぬ山の洞のうちに火ともし入てかね掘出す

赤裸の男子むれゐて鉱のまろがり砕く鎚うち揮て

さひづるや碓たててきらきらとひかる塊つきて粉にする

筧かけとる谷水にうち浸しゆれば白露手にこぼれくる

黒けぶり群りたたせ手もすまに吹鑠かせばなだれ落るかね