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あけみのうた

曙覧の歌

正岡 子規

「日本」日本新聞社、1899(明治32)年3月22日~24日、26日、28日、30日、4月9日、22日~23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,667 字 · 26 页

青空文庫

と詠み、月は「清し」と詠み、鳥は「啼く」、とのみ詠むのほか、花のうつくしさ、月の清さ、鳥の啼く声をしみじみと身にしめて感じたる後に詠むということなければ、変化のなきのみか、その景象を明瞭に眼前に浮ばしむることは絶えてあるなし。曙覧の叙景法を見るにしからず。例えば「赤きもみぢに霜ふりて」「霜の上に冬木の影をうす黒くうつして」と詠めるがごとき、「もみぢ」の上に「赤き」という形容語を冠せ、「影」の下に「うす黒き」という形容語を添えて、ことさらに重複せしめたるは、霜の白さを強く現さんとの工夫なり。その成功はともかくも、その著眼の高きことは争うべからず。

曙覧は擬古の歌も詠み、新様の歌も詠み、慷慨激烈の歌も詠み、和暢平遠の歌も詠み、家屋の内をも歌に詠み、広野の外をも歌に詠み、高山彦九郎をも詠み、御魚屋八兵衛をも詠み、侠家の雪も詠み、妓院の雪も詠み、蟻も詠み、虱も詠み、書中の胡蝶も詠み、窓外の鬼神も詠み、饅頭も詠み、杓子も詠む。見るところ聞くところ触るるところことごとく三十一字中に収めざるなし。曙覧の歌想豊富なるは単調なる『万葉』の及ぶところにあらず。〔『日本』