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あけみのうた

曙覧の歌

正岡 子規

「日本」日本新聞社、1899(明治32)年3月22日~24日、26日、28日、30日、4月9日、22日~23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,667 字 · 26 页

青空文庫

と、そぞろごといひけることのありしか、今はこのぬれける袖もたちまちかわきぬべう思はるれば、この新しき井の号を袖干井とつけて

濡しこし妹が袖干の井の水の涌出るばかりうれしかりける

家に婢僕なく、最合井遠くして、雪の朝、雨の夕の小言は我らも聞き馴れたり。

「独楽」と題せる歌五十余首あり。歌としては秀逸ならねど彼の性質、生活、嗜好などを知るには最便ある歌なり。その中に

たのしみはあき米櫃に米いでき今一月はよしといふ時

たのしみはまれに魚烹て児等皆がうましうましといひて食ふ時

など貧苦の様を詠みたるもあり。

文人の貧に処るは普通のことにして、彼らがいくばくか誇張的にその貧を文字に綴るもまた普通のことなり。しこうしてその文字の中には胸裏に蟠る不平の反応として厭世的または嘲俗的の語句を見るもまた普通のことなり。これ貧に安んずる者に非ずして貧に悶ゆる者。曙覧はたして貧に悶ゆる者か否か。再びこれをその歌詠に徴せん。〔『日本』明治三十二年三月二十三日〕

余は思う、曙覧の貧は一般文人の貧よりも更に貧にして、貧曙覧が安心の度は一般貧文人の安心よりも更に堅固なりと。けだし彼に不平なきに非るもその不平は国体の上における大不平にして衣食住に関する小不平に非ず。