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こうや
曠野
小川 未明
「民政」1933(昭和8)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,963 字 · 6 页
野原の中に一本の松の木が立っていました。そのほかには目にとまるような木はなかったのです。
「どうして、こんなところに、ひとりぼっちでいるようになったのか。」
木は自分の運命を考えましたけれど、わかりませんでした。そして、そんなことを考えることの、畢竟むだだということを知ったのです。
「ただ、自分は大きくなって、強く生きなければならない。」と思いました。
見上げると、頭の上をおもしろそうに、白雲がゆるゆるとして流れてゆきました。
また、あるときは美しい小鳥たちが、おもしろそうに話をしながら飛んでゆきました。しかし、雲も小鳥たちも、下に立っている木を見つけませんでした。
「小さくて、わからないのだな。」
木は、ため息をついて叫んだほど、その存在を認められなかったのです。
早く大きくなろうと木は思いました。認められたいばかりでなしに、地平線の遠方を見たかったからです。一年はたち、また一年はたつというふうに過ぎてゆきました。そして、この松の木が、すこしばかり根もとの地の上に、自分の小枝の影が造られるほどになったとき、その存在を認めてくれたのは、空をゆく雲でもなければまた小鳥たちでもありませんでした。