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こうや

曠野

小川 未明

「民政」1933(昭和8)年8月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,963 字 · 6 页

青空文庫

ただ、小鳥だけが、まれにきて枝にとまって翼を休めました。中でも渡り鳥は、旅の鳥でいろいろの話を知っていました。街の話もしてくれれば、港の話もしてくれました。もっときけばなんでも教えてくれるのであったが、松の木は、自らは経験のないことで、ただ渡り鳥のする話をきいて、世の中の広いということを悟るだけです。

「なぜ、私は、あなたのような鳥に生まれてこなかったんでしょう。」と、松の木がいいますと、

「そんなことをうらやんではなりません。あなたは、これから百年、二百年と生きられるからです。もっと、いろいろのことを見たり、聞いたりなさるでしょう。私たちは、明日もわからぬ命です。なにが幸福か、不幸かということは、神さまだけにしかわかるものでありません。」と、渡り鳥はいいました。

「もし、またこの近傍をお通りのときは、ぜひここへきて休んでください。そして、おもしろい話をきかしてください。」

「きっと、まいりますよ。」

そういって、渡り鳥は去ったのでした。こういうようなことが、これまでに何度あったでしょう。二度と同じ渡り鳥で、たずねてくれたものはなかったのです。

「あの赤い小鳥は、どうしてもうそつきとは思えなかったが、身の上に変わりがあったのでなかろうか。