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きょくばだんの「トッテンカン」
曲馬団の「トッテンカン」
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页
」と少女も同情するように言いました。
曲馬団というものは、はなやかな幸福なものとばかり思っている新吉には、この二人の女たちは、昨日も今日もどうしてこんなことばかり言うのだろうと、ただ不思議に思うばかりでした。
新吉はなんとも答えずに垂れ幕をすりぬけて、象のいる方へ走って行きました。象は、大きな耳をばさばさ動かし、長い鼻を左右にうちふり、足をばたばたさせました。なんにも知らぬ新吉が見ても、象はたいへんよろこんでいることがわかりました。昨夜一晩、同じ貨車の中ですごしたので、象は新吉を友だちのように思っている風なのです。
それから新吉と象は、すっかり仲よしになりました。象の名はファットマンといいました。太った男という意味です。
十時頃になると楽隊がはじまりました。そして十二時頃から曲馬ははじまりました。人はぞろぞろと通りましたが、中へは新吉の町でやったときほども入らず、やっと、見物席の三分の一がふさがっただけでしたけれど、馬の曲乗り、自転車の曲乗り、竹渡り、綱渡り、空中飛行、象の曲芸、猛獣使いの芸当、少女たちのダンスと、演芸はそれからそれへ、かぎりもなく演じられました。