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きょくばだんの「トッテンカン」
曲馬団の「トッテンカン」
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页
そのために目まいがするのです。しかし団長は、
「横着ものめ、ぐずぐずしていると、たたきのめすぞ。」とどなりつけました。
新吉は見ていて、かわいそうでたまらなくなりました。新吉が一年前、いなかの町を逃げ出して停車場まで曲馬団のあとを追っかけて来たとき、はじめて新吉に話しかけたのがこのきえちゃんでした。そのとき「曲馬団の中はもっとつらいところだよ。」とさとしてくれたのが、わか姉さんでした。それからこの二人は、何かにつけて新吉の味方になり、新吉がまっ黒けになって、朝から夜おそくまで働かせられているときは、涙を流して同情し、新吉の手にあまるつらい仕事は、かげながら手伝ってくれたのでした。で、新吉は今はこの二人を、またとない恩人とも思っているのです。
その一人の、新吉より年下のきえちゃんが、今こんな目にあっているのですから、新吉は黙って見ていられるはずはありません。
「ねえ、きえちゃん、僕が代わって芸をしてあげよう。」
そう新吉はいい出しました。
「だってトッテンカンには、わたしの芸が出来やしないよ。」
「大丈夫、むずかしいことはしないのさ。」
「でも、外の人に代わってもらうと、また罰をくわされるもの。