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きょくばだんの「トッテンカン」
曲馬団の「トッテンカン」
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页
ただ何となく、いなかの町はずれの高台の森に似ているので、わけもなく引きつけられました。新吉は公園の上へ上って行きました。
そのうちに日が暮れてしまいました。新吉は泣きたくなりました。新吉は、公園の高台から、美しい灯の街を見下ろしながら、いつまでもいつまでもそこに立っていました。
その夜新吉は、公園の奥のこかげの石の上に寝てしまいました。眠ったりさめたりしている新吉の頭の中には、いなかの町のことや、鍛冶屋のおやじのことや、曲馬団の中でのさまざまのことが、とぎれとぎれに浮かんでは消え、消えては浮かびました。
その朝明けのことです。新吉はまずライオンのほえ声をききつけました。それからいろんな動物のなき声をききつけました。曲馬団の動物園でききつけている声なので、それは自分の耳のせいではないかと思いながら、新吉はその声のする方へ歩いて行きました。すると高い石の塀がぐるりとめぐっているところへ出ました。ああ、これが上野の動物園というのだな、と新吉はやっと思いつきました。
新吉は、曲馬団のファットマンのことを思い出し、門の鉄格子の扉につかまって、中のようすをいっしんにのぞいていました。