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きょくばだんの「トッテンカン」

曲馬団の「トッテンカン」

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页

青空文庫

「さーぁ、いらっしゃい、いらっしゃい。空中の曲芸は大飛行のはじまり、はじまぁり。」

客呼びが、片手を頬っぺたにあててどなります、すると正面の幕がさっと上がり、中から、胸に金銀の星の輝く赤い服をきた少女を、二人ずつ乗せた馬が三、四頭出て来ます。かわって同じすがたをした少年少女たちが中へ入って行きます。出て来た馬は右と左へ分かれます。見ると、そこには、同じような馬がずらりとならび、その背にはそれぞれ、それこそ造りつけた人形のような少女たちが、まばたき一つせずじっとしています。そうして見ていればいるほど、新吉はびっくりするものばかり見つけ出し、海の底の竜宮か、雲の上の天国か、自分はもうこの世の中にいるものとは思えなくなってしまいました。

「さぁー、いらっしゃい、いらっしゃい。猛獣つかいがライオンとすもうをとります。さぁさぁ。」

中からは見物人の拍手が、あらしのように鳴りひびいて来ます。楽隊の音は、大なみのように鳴りわたります。

新吉は、からだが宙に浮かんでいるような気持ちで、テントのまわりを何べんとなくまわり歩きました。と、ある場所にちょっとしたすき間があり、ちらりと中のようすが見えました。