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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

そんなことを言わずに、これ、出してくれよと下から出れば、ここぞという見得に勇み立ちて威丈高に、私はお湯に参ります。奥村さんに出しておもらいなさいまし。

三

御散歩ですか。と背後より声をかくるは辰弥なり。光代は打ち驚きて振り返りしが、隠るることもならずほどよく挨拶すれば、いい景色ではありませぬか。あなた、湖水の方へ行ってごらんなされましたかと聞く。いえまだ、実は今宿を出ましたばかりで、と気を置けば言葉もすらりとは出でず、顔もおのずから差し俯向かるるを、それならば御一しょに、ちとそこらを歩いて見ましょう。今日は気も晴々として、散歩には誂え向きというよい天気ですなア。お父様は先刻どこへかお出かけでしたな。といつもの調子軽し。

ですが親父が帰って来て案じるといけませんから、あまり遠くへは出られませぬ。と光代は浮足。なに、お部屋からそこらはどこもかしこも見通しです。それに私もお付き申しているから、と言っても随分怪しいものですが、まあまあお気遣いのようなことは決してさせませんつもり、しかしおいやでは仕方がないが。

いやでござりますともさすがに言いかねて猶予う光代、進まぬ色を辰弥は見て取りて、なお口軽に、私も一人でのそのそ歩いてはすぐに飽きてしまってつまらんので、相手欲しやと思っていたところへここにおいでなさっ