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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

何とか仲を直しておいでなさいな。私は困るわ。

その投首のしおらしさに、善平は一時立ち止まりて振り返りぬ。綱雄はむずかしき顔も崩さず、眉根を打ち寄せて黙然たり。見るにこなたも燃え立つ心、いいわ、打っちゃっておけ!

袖振り払って善平は足音荒く出で行けり。綱雄は打ち沈みてさらに言葉もなし。渓行く水はにわかに耳立ちて聞えぬ。

綱雄さん、あなたはなぜそんなにも奥村様をお嫌いなさるの。いい加減にあしらっていればいいではありませんか。え、どうかしてそうおしなさいな。こんなことになると私はどっちへついていいか分らなくなって、ほんとに泣き出したくなって来るわ。としみじみ言い出づる光代、出来るならねえ、どうぞ気を取り直して見て下さいな。え、あなた、と顔を窺き込みぬ。人を惹く風情はさらなり。

動かされてか綱雄は顔を上げて少しく色を直しぬ。されども言葉はさらに譲らず。私は自分を枉げることは出来ん。あの男はどこまでも私の気に入らんのだ。私はもとより拠るところがあって言ったのであるが、伯父様が用いて下さらねばそれまでのこと、お前はまああの男をどう思う。

私なんぞにはよくは分りませんが、あんなに喋々しい人というものは、しんには実が少ないだろうかと思いますよ。