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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

泣き顔の光代は悄然座りたるまま迎えもせず。何だ。どうした。綱雄はどこへ行った。

綱雄さんは帰ってしまいました。これを御覧なされと光代は手紙を差し出す。善平は手にも取らず、何だ。怒って帰ったのか。馬鹿な奴、とばかり後は忘れたるごとく、そんなことはどうでもよし。捨てておけ。と急がわしく硯を引き寄せ、手早く認めたる電信三通、婢を呼び立ててすぐにと鞭打たぬばかりに追いやり、煙管も取らず茶も飲まず、顔はいきり立って眼はある方にさも面白きものの影を見つむるごとく、掘出し物掘出し物、これがほんの掘出し物だ。何にしても書記官という後立てを、背中に背負っていれば論はないさ。綱雄などにはこういうところが見えぬから困る。とにもかくにも有名な木島炭山、二十万とは馬鹿馬鹿しい安価だ。棄値に売っても五十万の折紙、毎年の採掘高は幾十万円、利益配当の多いことはまず炭山にはほとんどまれで、その炭質の良いことは遠く三池の石炭にも増して、内外諸方へ軍艦用として売り込むものでも毎年およそ何十万噸、いや福の神はとんだところにおいでなされた。何としてよそへすべらしてなるものか。それにしても奥村は働き手だ。