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げっせかいきょうそうたんけん

月世界競争探検

押川 春浪

「探檢世界秋季臨時増刊 第四卷第三號 月世界」成功雜誌社、1907(明治40)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页

青空文庫

と申しますから、私は矢庭にそこへ飛び込んで、旦那様はもう私の若旦那が二日も前にお会いになって、今道具を取片付けてこちらへお越しになるはずだと申しますると……」

「うん。それからどうした。」

「秋山の畜生め。思い懸けない私を見て吃驚したようでござりましたが、供の平三に何かいい付けると、乱暴にも平三が、あの御衰弱なされた旦那様を引担いで逃げようと致しますから……」

「何平三が?」

「はい。それ逃がしてなるものかと私も一生懸命に争いましたが悲しい事には二人に一人、いよいよ洞穴を出ようと致しますので、せめてこの上は鉄砲で打ち殺してなりとやろうと思って追かけて出かける処を、秋山男爵に乳の辺りに当身を喰わせられて、それから後は前後不覚、只今貴方様のお声で始めて正気になりましたような次第でござりまする。」

と涙ながらに物語った。

聞き終った文彦は落胆したように、

「ああ折角ここまで苦心しながら、残念な事をしたなあ。」

と投げるがごとくいい棄てて、慨然として天を仰いで長大息したが、再び決然として立ち上り、

「東助、こうなっては腕づくでも叔父さんを取り返さなければならない。叔父さんを無事に連れ帰るのは誰でもいいが、このままにしておいては奸佞邪智の秋山男爵だ、この上如何なる悪計を持って我らを苦しめ、かつ鳩のような月子さんを翫ぶか知れない。