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げっせかいきょうそうたんけん

月世界競争探検

押川 春浪

「探檢世界秋季臨時増刊 第四卷第三號 月世界」成功雜誌社、1907(明治40)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页

青空文庫

今しも全速力を出そうと把手を握っていた秋山男爵は、この砲声に思わずその手を放すと、把手は逆に回転して、飛行船は少しく下降した。ハッと思って持ち直した時にはもう文彦の飛行船は手の届くくらいの近距離に近づいていた。

「秋山男爵※」

文彦は、勢鋭く声をかけて、

「久しぶりにお目に懸ります。」

と態と丁寧に会釈をした。

「左様。」

と秋山男爵は傲然として答えた。

文彦は言葉を継いで、

「秋山男爵。改めて申しますが僕は叔父を受取りに参ったのです。」

「叔父? 叔父というのは篠山博士の事ですか。」

「左様。」

秋山男爵は俄に言葉を荒らげて、

「馬鹿な事をいうな。虫のいい事をいうにしても大概にしておくがいい。僕がここまで態々死を決して来たのは何のためだ。ただ篠山博士の在処を捜らんがためだ。それほどにして得た博士を何条おいそれと貴様に渡す事が出来るものか。馬鹿※ それほど欲しくば何故自分で捜さんか。」

と図々しくも逆捻を喰わせて、

「僕は命賭けて得た博士だ。それが欲しくば貴様も生命を賭して奪うがいい。」

「よろしい。決闘※ 用意をなさい。」

「生意気な口を利く二才だ。さあ相手になってやろう。