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つきよとめがね

月夜と眼鏡

小川 未明

「赤い鳥」赤い鳥社、1922(大正11)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,679 字 · 8 页

青空文庫

もう、どの家もみんな眠ってしまいました。この家の前を通ると、まだおばあさんが起きておいでなさいます。私は、おばあさんがごしんせつな、やさしい、いい方だということを知っています。それでつい、戸をたたく気になったのであります。」と、髪の毛の長い、美しい少女はいいました。

おばあさんは、いい香水の匂いが、少女の体にしみているとみえて、こうして話している間に、ぷんぷんと鼻にくるのを感じました。

「そんなら、おまえは、私を知っているのですか。」と、おばあさんはたずねました。

「私は、この家の前をこれまでたびたび通って、おばあさんが、窓の下で針仕事をなさっているのを見て知っています。」と、少女は答えました。

「まあ、それはいい子だ。どれ、その怪我をした指を、私にお見せなさい。なにか薬をつけてあげよう。」と、おばあさんはいいました。そして、少女をランプの近くまで連れてきました。少女は、かわいらしい指を出して見せました。すると、真っ白な指から赤い血が流れていました。

「あ、かわいそうに、石ですりむいて切ったのだろう。」と、おばあさんは、口のうちでいいましたが、目がかすんで、どこから血が出るのかよくわかりませんでした。