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ぼうがくととうきょう

望岳都東京

木暮 理太郎

「霧の旅」1934(昭和9)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,243 字 · 61 页

青空文庫

是等の山々を望み得る市内の展望台としては、浅草の凌雲閣と芝の愛宕の塔だけであろう。其他駿河台のニコライの塔や高台の上の火の見櫓というようなものに上れば、よく見えるには相違なかろうが、普通誰にも自由に展望し得る所は、前記の二ヶ所のみである。尤も日光の男体山や奥白根などは、市内の街道からもちょいちょい見られる。例えば大学の赤門前からは冬の間よく北正面に男体山が見えて冷たい風が其方から吹きつけて来る。いつか日本橋の上から秩父の三宝山を見て驚いた事があった。然し全体を大観するには是非とも凌雲閣に登らなければならない。愛宕の塔ではまだ少し低いので過半は前面の木立に遮ぎられて了う。凌雲閣ならば何一つ遮ぎるものは無いが、惜しい事には浅間山から赤城山の見ゆる方向に赤羽、王子等の工業地があって、林立せる烟突から盛に吐き出す黒烟は、遠慮なくこれらの山々を呑吐して、容易に全容を窺うことが出来ぬ。そこで自分は烟などに邪魔をされないで、ゆっくり眺める事の出来る場所はないものかと、市外近郊の地を探し廻って赤羽台に立った時、其眺望の広大なのにおどろいた。大菩薩の連嶺から右の方秩父、上信界、上越界、日光、那須、筑波の山々まで、空気の清澄なる日には手に取るが如く見得る。