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ぼうがくととうきょう

望岳都東京

木暮 理太郎

「霧の旅」1934(昭和9)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,243 字 · 61 页

青空文庫

その日はあたりに少し雲があって判然しなかったから、確めることが出来ませんでした。その後に又出かけた所が丁度中村清太郎君と水路部の技師をして居られた故小倉伸吉君のお二人とが偶然にも来会されて、三人で所謂文珠の知慧を絞って確に聖岳に違いないと決定しました。御承知の通り東から眺めた聖の形は、大略金字形をなしていますが、天辺が恐ろしく尖り、左はやや急で、右はやや緩く、其終端の所が少しはね上って黒い影を伴って居ります。このはね上った所は三角点のある所ですが、この形は聖以外にはありませぬ、それで聖ということが解りました。中村君も私も聖に登って来た許りの時ですから自信がありました。勿論山の輪郭はどの山でも皆特徴があって、一度それをのみ込めば、大概の所から見ても間違わず見当がつく位でありますから、遠く離れて居っても、其の特徴が認められれば、先ず間違いはありません。その当時愛宕の塔以外では聖は望めなかったので、愛宕の塔が震災でなくなって了ったから、もう聖は見られないものかと思って居りました。所がついこの二、三年前に銀座の松屋の屋上から、ふと其方へ目をやると、見える、確に聖が愛宕塔から見たのと殆ど同じ所にちゃんと出て居る。