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あさのかぜ

朝の風

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页

青空文庫

のであった。新しい木肌の匂いは天幕の外へあふれている。腕章をつけた男がいて、即売されていた。サヨたちと一緒にバスを降りた紋付羽織の女づれは、それらの品物のやすいのに興奮したような手つきで、何か喋りながらいかにも気やすそうに買物をどっさりよっている。

すこしわきへのくようにしてサヨと友子は暫くそういう光景を見物していた。ふと気がつくと、その往来の向う側に下駄の歯入れやだの古俵屋だのの並んだ前からこっちを見物している男女があった。そんなにひろい道幅でもないのに、町のひとたちは自分たちの軒下から離れないで、赤白のアーチとの間に動かせない距離を認めているような表情で、あっち側から見ているのであった。

やがて、サヨが友子の手をそっととった。

「行きましょうか」

友子は歩き出しながら半ば感服したように、

「よく売れているわねえ」

と云った。

「売れるにこしたことはないんでしょうけれど、……おはちなんかねえ」

おはちは家庭の団欒のシムボルのようなものだから、何だかあたり前の町の桶屋さんの店にあるものの方が、そこからたべやすいという友子の感じかたは自然で実感があった。

バスへのってからサヨは、