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きのうえとしたのはなし

木の上と下の話

小川 未明

「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年5月7、8日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,558 字 · 8 页

青空文庫

一

一

ある家の門のところに、大きなしいの木がありました。すずめが、その枝の中に巣を造っていました。さわやかな風が吹いて、きらきらと若葉は波だてていました。

「お母さん、さっきから、小さな子供たちがこの木の下でぺちゃぺちゃいっているが、なにをしているんでしょうね。」と、子すずめがききました。

「さあ、なにをしているのでしょう。年雄さんとちい子ちゃんとですね。おまえ下の枝までいってごらんなさい。」と、母すずめが答えました。

「空気銃で打たれるといけないな。」

「いいえ、あの子たちは、そんなわるいことをしませんよ。それに、もうこのごろは、銃を持つ季節でありませんからね。」

子すずめは、飛んで降りようとしました。

「だが、あまり下へいってはいけませんよ。近所にねこがいますからね。」と、母すずめは注意をしました。

「お母さん、ねこならだいじょうぶですよ。僕たちのほうがよっぽど早い。」

「いいえ、ここにいる年とったねこは、それはりこうで、木に登ることが上手です。いつか、私ですら、もうちょっとで捕まるところでしたから、油断をしてはいけません。」

「あの白と黒のぶちのあるねこでしょう?」