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きのうえとしたのはなし

木の上と下の話

小川 未明

「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年5月7、8日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,558 字 · 8 页

青空文庫

「かわいそうだな。」と、年雄さんが、いいました。

「あんまり、のろいからよ。もっと早く歩けばいいのに。」

「だって、歩けないから、しかたがないだろう。」

二人の考え方が、ちがいました。

「はや、ありがたかってよ、年雄さん。」と、ちい子ちゃんは、どこからか、みみずのじっとして動けないのを知って、集まってくるありを見て、不思議がりました。

「こいつめ、こいつめ。」といいながら、年雄さんは、石ころで、一ぴき、一ぴき、小さなありを殺していました。

「年雄さん、およしなさいよ。ありが、わるいんではないわ。」

「まだ、みみずは、生きているんだよ。」

「みみずがのろのろしているから、わるいのよ。」と、ちい子ちゃんは、あくまで、みみずのせいにしていました。

木の枝に止まって、下のようすを見ていた子すずめは、

「さあ、どちらが、わるいのだろうか。」と、頭をかしげていました。年雄さんにもわからなかったかもしれません。

「あっちへ、飛んでいけ。」といって、棒切れへありのついたみみずを引っかけて、圃の方へ投げてしまいました。

「年雄さん、お花を見つけて、おままごとしましょうよ。」

二人は、あちらへ、駆けていきました。