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きそおんたけのりょうめん
木曽御嶽の両面
吉江 喬松
「太陽」博文館、1908(明治41)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,819 字 · 32 页
そして「ああ、好い気持で寝てしまったな。」と、両手を長く伸しながら一行の方を見て、「一体、お前様たちゃ、何処から来ただね。」
「何処からって、高山からさ、お前は一体如何したんだ、そんな処に寝ていて、吃驚するじゃねえか。」
「なあに、一ぱい引かけて、その元気でやって来ただがね、あんまり好い気持だもんだで、つい寝ちまって……はア……。」
「でも、もう日が暮れるじゃないか、何処まで行くんだえ。」
「なあに、今夜は平湯までさ、明日は信州へ帰るんだ。」
「平湯までだって、まだ大分あるだろう。」
「なあに一里そこそこでさあ、へえこれから先きは一と走り下り一方でさあ。」
「じゃ一所に行こう、老爺さん。」
「ええ、行きますべえ、ああ、どっこいしょ、山で日を送ってりゃ安気なもんだ、あさっでは久し振りで嬶の顔でも見ますべえかなあ……」
「老爺さんは今まで何処にいたんだえ。」
「何に飛騨の山の中にいたんでさあ、飛騨なんて小っぽけな国でね、これから信州へ帰るんでさあ。」
「信州の方が好いかね。」
「そりゃ、国柄が違いまさあ、昔から飛騨は下々国といって、『飛騨の高山乞食の出場所』って、歌にもあるじゃありましねえか。