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みぼうじん
未亡人
豊島 与志雄
「諷刺文学」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页
それを、あなたは貪るように楽しみましたね。
「わたし、あなたをほんとに頼りにしてるのよ。」
そんなことを、謂わば餌食に向って言う人がありますか。あなたはちょっと煙草をふかしてみたり、静に微笑んだりして、高木君の淋しさというか、それを貪り味ったものです。あまり楽しんでいると、肩も少しは凝りましょうよ。あなたは肩をちょっと叩きました。
「なんだか、血圧が少し高いらしいのよ。でも、死ぬなら、脳溢血なんかがいいわね。長く苦しまなくて、一思いに死ねるんだから……。」
丹前を肩からずり落し、襟元をくつろげ、手を差し入れて、肩をなでましたね。
「ごらんなさい、こんなよ。」
血圧が高いと肩が凝るものかどうか、その説明の代りに、あなたは高木君の方へ炬燵半分ほど体をずらせ、その手を執って、懐から肩へと持ちこんでしまいました。高木君もだいぶ酔ってはいましたが、全く切なそうな顔付で、そして息をこらし、ぼってりしたあなたの胸から肩へ掌を押しあてながら、とうとう炬燵布団の上に顔を押しあててしまいました。それから、静に手を引きましたよ。
「薄情ね、少し揉んでよ。」
高木君は眼をつぶって、あなたの肩の肌を揉むまねをしましたが、やがてまた手を引っこめましたよ。