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みぼうじん

未亡人

豊島 与志雄

「諷刺文学」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页

青空文庫

しまいには精根つきて、仰向けに大きな腹を水面すれすれに、ぶくっと浮いてるのもあります。そんなところを、あなたは見たことがありますか。脂っこい物を腹につめこみ、酒に酔い、そして拙劣な芝居を試みる、そんな下らないことを彼等はしません。

こんなことを私が言うのも、蛙の方があなたよりは、純粋で真摯だと思うからに外なりません。

――わたしは人間ですもの。

それは勿論、あなたは人間ですよ。だけど、その人間が、素知らぬ顔をして、相手の掌を肌に押しあてたまま、うっとりと上気し、額の髪の生え際に汗の玉を浮かべ……いや髪の生え際ばかりではなく、全身の毛穴に汗ばんでいたではありませんか。

高木君はなにか怖じ恐れて、顔を伏せ、手を引っこめましたよ。これが人間的な恋愛だったら、つまり、性慾ばかりでなくて愛情だったら、高木君は全身を投げ出したかも知れませんよ。

そもそも、あなたが未亡人だったことがいけないのです。昂揚された恋愛というものは、男の方は別として、女の方は、令嬢でも構わず、人妻でも構わず、娼婦でも構わず、機縁さえあれば成立するものですが、未亡人ではなかなか困難ですよ。