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みぼうじん

未亡人

豊島 与志雄

「諷刺文学」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页

青空文庫

――猫でさえも。

そうです、猫でさえもそんなことをしてるのだから、人間がしていけないということはありますまい。家の中の用は女中や書生がしてくれるし、あなたは何にもしなくても構やしません。働かざる者は食うべからずと、そんな野暮なことを私は言いはしません。だが、日向の縁側や炬燵の上でうとうとしてる猫の居眠りは、あなたのそれよりは、少くとも純粋です。その時々の食物で腹を満たしさえすれば、或る程度の温気のなかに、ただ単純に居眠っているのです。だがあなたは、はっと気を取り直しては、秋山さんへ電話してみようか、どうしようかと、心の中でやきもきしていたではありませんか。

――猫に小判……。

そんな諺は、猫の無智を軽蔑することにはならず、却ってそれを羨むことになるのです。秋山さんから果して五十万の現金が来るかどうか、あなたは待ちこがれて、猫を邪険に取扱ったことさえありましたね。

五十万円といえば、可なりの金額であることを私も知っています。それが、あなたの属してる保守党では、代議士の選挙費用などに雑作なく使い果されてしまいますね。金があったからこそ当選した代議士が、如何に多いことでしょう。