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みらいのてんさい
未来の天才
豊島 与志雄
「人間 第三卷七月號」人間社出版部、1921(大正10)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,630 字 · 38 页
いくら嬉しいったって、余りはめを外しすぎると、却って君達のためによくないと思うんだがね。安全で面白い方法はないものかな。」
「なに大丈夫だ。僕が引受ける。」
「当人の君が引受けるなら、勿論僕の方は差支えないんだが……。」
そういう河野の煮え切らない態度を、私は強いて説服してしまった。そして彼を促して、外へ出た。洋酒のため、足の先までいい加減に微酔していた。私は両手を打ち振りながら歩いた。通り過ぎる人にじろじろ見てゆかれるのが、私の上機嫌をなお助けた。
私達は河野の下宿に戻った。そして二品を丁寧に小包にした。
「この真珠は全くいい。」と河野は感心していた。
包の表には、山口正徳様、山口静子様、と並べて書き、横の方に贈呈と誌した。裏にはただ一字Kと認めた、木川の頭字を取ったのである。
さて、こう事がきまってしまうと、私はその午後をどう過していいか分らなくなった。河野は何処かへ行こうと私を誘ったが、私は何処へも行きたくなかった。郊外へ行ってみたい気も一寸した。新緑に燃え立った森と絨緞のような野と冷たい小川の水と、それから限りない高い蒼空、それらが私の心を少し動かした。