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みかいなふうけい

未開な風景

宮本 百合子

「婦人公論」1927(昭和2)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页

青空文庫

一歩一歩近づくのが判ったが、みのえは恐怖で痺れ体を動かすことが出来なかった。眼尻を掠め、股まで裸の二本の脚と穢い体の一部が見えるくらい傍によった時、小僧は低い震えるような声で、

「――……」

と云い、みのえの正面へ立ちはだかろうとした。みのえは、のっそり立ち上り、小僧を睨みつけると、物も云わず片手にキラキラ閃くものを振り翳し小僧に躍りかかった。

気がついた時、みのえは元よりずっと草原の上の方に跳ねとばされていた。四五間下の方に、小僧も倒れた。彼等は互に睨み合いながら、獣のように起き上った。みのえは、後じさりにそろそろ上の坂の方へ出ながら、組打ちした場所と思わしい辺をちょいちょい見た。リボンで帯につけていたエ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ァーシャープを彼女は振り廻したのであったがそれが環のところかられてどこへか行ってしまった。

小僧は、じろじろみのえの方を見ながら草をこいで草原の縁へ出、つぎの当った股引をはき始めた。その時、路の彼方に大人の男が現れた。パナマの縁をふわふわさせながら。――

みのえは、坂を下り出した。子供の微かな叫び声と、赫土の空地が行手にある。