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みかいなふうけい

未開な風景

宮本 百合子

「婦人公論」1927(昭和2)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页

青空文庫

「そうですとも」

「……でも余りだわねえ、そいじゃ」

「私は淋しい人間だというわけでしょう?」

「…………」

あっちで二人が沈黙したら、その空気が徐ろに狭い家じゅうに拡った。みのえは、いかにも夜の更けたことを感じ、あっちの灯の明るい、油井の白いソフトカラアーを浮立たせている部屋の沈黙を甘美に思った。

するのは瓦斯の焔が噴き出す音ばかりだ。ピラピラする透明な焔色を見守り、みのえは変に夢中な気持になって湯の沸くのを待った。彼女には、この夜ふけの、恋物語の後の沈黙が異常に作用するのであった。じかに板の間にいて寒さも感じない。

薬罐の底がクトンとずるように鳴った。

シューン。……

みのえは、溺れ込んだように集注して息をつめ、たぎり始めた湯の音をきいた。蓋を、元禄袖の袖口できると、俄に湯玉のはじける音がはっきりした。

もう少し……もう少し……もう少し。あたりは暗いし、待ち遠しいし、つきつめた、気の遠くなるような思いで今溢れる際までたぎり立たせ、みのえは瓦斯を消し、ちょっと手をひっこませて元禄の袖口の綿入れにもうっと温く伝って来るほど熱した薬罐を持って立ち上った。