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みかいなふうけい
未開な風景
宮本 百合子
「婦人公論」1927(昭和2)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页
桶屋の前で、みのえの小学校で体操を教えた教師に出会った。桃色のカーネーション、アスパラガス、紅毬薔薇。朝日のさす往来でパラフィン紙を透きとおす活々した花の色が、教師をひきつけた。彼は、みのえの方へ黒い詰襟服のカフスをのばし、
「それ、お呉れ」
と云った。驚いて、みのえは花束を後にかくした。
「いやかい?――誰にやるの」
「いいひと!」
みのえは憤ったように本気な力を入れてそれを云い、さっさと自分の道を歩き始めた。
すがすがしい朝の花束に、教師の息がかかったのをみのえは残念に思った。彼女は油井の玄関を開けた時、少し悲しそうに、
「これあげるわ」
と、その花束を出した。
○
みのえは光りもののうちに生活している。彼女の内の発光体の眩ゆさで自分も外界も見えぬ。
○
油井は、お清夫婦とみのえを誘って活動写真など見物に出かけた。
「もうこれから帰るの面倒くさくなっちゃった。泊めて下さい」
そう云う翌朝、みのえは白々明けに目を醒した。心臓がとび出しそうな心持で、油井の泊った二階へ登って行った。
「早いのね、もう起きたの」
油井も起きていて、彼等は並んで窓枠に腰かけた。