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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

米良はふーんといい、それから、不審な点を思いだしたように、それにしてもこれだけの金をよく溜めたなと云った。

「よく溜めたといったところでまだ半分にも足りませんが、これには涙ぐましい話があるんですよ」と平五は云った、「ほかの者には云えないが、聞いてくれますか」

「自分で涙ぐましいって云ってれば世話はないわ」とくにが云った。

「後学のために聞きましょう」と米良は云った。

「恥からさきに話しますが、いちばん初めは七つの年です」と平五は続けた、「そのとき新庄の叔父は三十で、まだ木挽町に部屋住でいました、そして、もうそんな年では生涯ひやめしを食うことになるだろう、とまわりの者も云うし、自分でも諦めていたんでしょう。私はそれを見ていて、子供ごころにも深刻に考えたんですね、こうしてはいられないと思ったことをいまでも覚えていますよ」

そして、ひたむきに金を溜めようと決心した。金を溜めてどうするという目的はなかった、金さえ持っていればという、漠然たる気持だったが、彼はむきになって実行した。

「ここが恥ずかしいところなんですが、小遣を溜めるだけでなく、そんな年で私は稼ぐくふうをしたんです」