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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
と云った。
平河町から帰る途中、平五はいろいろな思いに悩まされた。
父が覘っているというので短刀を持って帰った。多賀はぜひ研ぎあげてみたいと云ったが、そんなことをしていて父に取上げられてはおしまいである。父から譲れと云われれば、気の弱い叔父に断わることはできないだろう。それでは鳶に油揚をさらわれるようなものだ。
「まるっきり鳶に油揚だ」と歩きながら彼は呟いた、「そううまくいってたまるものか、冗談を云うなってんだ」
細江にわけを話そう、と彼は思った。清鑑堂へ売りに来たとき、正宗だと娘は云ったそうである。そう伝わってはいたが、母娘は(亡くなった細江その人も)信じてはいなかったのだろう。さもなければ二分二朱などで売るわけはない。したがって本物だとわかった以上、それを知らせるのはこちらの当然の義務である。
「だが、知らせてからが問題だ」それなら家宝として買い戻す、と云われたらどうするか。まさか金八十五枚くれとは云えない、こっちが清鑑堂から買った代価なら請求できるが、二分の銀にも困っているのだから、おそらく三分二朱の都合もたやすくはできまいし、金八十五枚とわかっているものを、みすみす三分二朱で手放すのは残念である。