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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
「私は大丈夫です、どうか心配しないで下さい」と平五は云った、「父上の云うとおり、私は古道具屋が性に合ってるんでしょう、今夜はじめて決心しました、私は道具屋になります」
「まあ平五さん、なにを仰しゃるの」
「おちついたらお母さんには知らせます、ではこれで、――」
母の呼ぶ声には構わず、平五は外へとびだした。宵の街をいそぎ足にゆきながら、彼は首を振ったり舌打ちをしたり、また独り言を呟いたりした。彼は自分が云うべきことを云わなかったことでくやしがり、また、云わずにがまんしたことを誇らしく思った。
「おやじのやついいことを云やあがった」と彼は歩きながら呟いた、「あんな気のきいたことが云えるとは知らなかった、あの一と言にはまいったな」
そうだ、弁解することはない。自分の立場を云いたて、おやじをやりこめたところでそれだけのはなしだ。おれのやったことがおれにとって正当だったということは、事実のうえで証拠だてればいい。
「一流の道具屋になってやるぞ」と彼はいさましげに呟いた、「侍だましいもくそもあるもんか、自分の力でそのみちの一流になれば、永代扶持で徒食しているよりよっぽど人間らしいや、へ、いまに証拠をみせてやるから吃驚するな」