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すえっこ

末っ子

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页

青空文庫

二

二

その年は平五にとっていやな年であった。今年は厄年になりそうだぞ、と彼は思った。第一は正月の集まりに、次兄の杢之助とやりあったことだ。毎年正月の六日に、親族の人たちが小出へ集まる。これは個別に年頭の回礼をする煩を省くためで、以前は一年ごとにもちまわりだったが、八年まえに先代の鈍翁が亡くなってから、いつとなく小出だけへ集まるようになった。

――おやじのばかげた虚栄心だ。

と平五は心の中で冷笑していた。親族の中心におさまること、かれらから「木挽町の御本家」とよばれること、そして骨董じまんをするのがいい気持なのである。集まるのは十二人だったが、三年ほどまえから九人に減った。おやじの骨董じまんに閉口したのだろう、と平五は思っているが、今年はさらに減って五人しか来なかった。平河町の森内膳。神谷町の木下杢之助。薬師小路の土方市之丞。田村小路の新庄主殿。それから榎坂の米良平左衛門という顔ぶれであった。

「おやおや、おまえまだいたのか、平五」

酒宴がなかばごろになったとき、杢之助がそうよびかけた。平五より四つ上の二十八歳で、六年まえに木下へ養子にいったが、うちにいるじぶんから平五とは仲が悪かった。