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すえっこ
末っ子
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,564 字 · 55 页
「どうもしませんよ」
「じゃあおれの云ったことは聞えたんだろう」
「聞えましたね」
「聞えたのに返辞をしないのか」
「必要がないでしょう」と平五が答えた、「このとおり私はここにいるし、いることは誰の眼にだって見えるんだから」
「おれが云うのはそんなことじゃない、養子の縁談があったのに断わったというから、おまえになにか目算があるのだろうと思っていたところが、相変らずのそのそしているから訊いたんだ」と杢之助が云った、「おまえもう二十五になるんじゃないか」
「二十四ですよ」
「来年は五になるさ、どうするんだ」と杢之助が云った、「縁談のより好みなんかしていると、一生ひやめしを食うようなことになるぜ」
よけいなことを、と平五はかっとなった。
「結構ですね」と平五はやり返した、「養子にいっても小遣に不自由したり、好きな酒も飲めずにちぢこまっているくらいなら、ひやめしを食ってるほうがましですよ」
杢之助の顔色が変った。
なんだって、それは誰のことをさすんだ、と杢之助が云った。誰のことでもありません。譬え話です、と平五が答えた。ごまかすな、いまのはおれへの当てつけだ、と杢之助がいきりたち、つまらない応酬が始まって、すると、向うから長兄がよせと云った。