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むらへかえったしょうへい
村へ帰った傷兵
小川 未明
「日本の子供」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,124 字 · 9 页
しかし、今日は、故郷へ帰ることを申しあげに、靖国神社へお詣りをするのであります。清作上等兵は、軍服の威儀をただして、金色の徽章を胸につけ、堂々として宿を出かけたのでありました。
こうして見る清作さんは、じつにりっぱな軍人でした。だから町を通ると、男も女も振り向いて、その雄々しい姿をながめたのです。けれど中には、ぽかんとして、無表情な顔つきで見送るような、子供を背負った女もいました。
「世間の人たちは、勲章とでも思っているのかな。」
清作さんは、顔に微笑をうかべました。なぜ彼はそんなことを思ったでしょう。それは、この人たちの顔に、戦傷徽章に対しても、なんのかなしみの影が見えなかったからです。
このときあちらから、紳士ふうの若い男と、頭髪をカールして、美装した女の人がきかかり、やがて彼とすれちがったが、その人たちは、まんざら学問のない人とは思われなかったのに、やはり徽章には気のつかぬようなようすでいきすぎてしまいました。
「私は、いままであまり思いすぎていたようだ。」と、清作さんは、つぶやきました。なぜなら、世間は、戦争にたいして無関心なのか、それとも軍人が戦争にいって負傷をするのをあたりまえとでも思っているのか、どちらかのようにしか考えられなかったからでした。