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とうきょうようさい
東京要塞
海野 十三
「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页
大体の工事が済んで、左官の仕事はもうあまり要らなくなった。それだのに、誰が頼んでも帰宅を許そうとしない松竹梅の札をつけた監督連だった。
一行六人は、毎日することもなく一室に閉じこめられ、飽食していた。
或る日、五郎造親方は、只一人呼び出された。左官の仕事道具をもって出てこいというのであるから、これは仕事が出来たのに相違ないと思った。珍らしいことだ。これで四日間というものを、仕事なしで暮したわけだ。
五郎造親方は、久しぶりで長い廊下をとおり、見馴れた小さなくぐり戸から、例の工事場へ入っていった。だが彼の一生において、このときぐらい胆を潰したことはなかった。
「呀っ、――」
といったきり、彼は腰をぬかして、へたへたと漆喰の上に坐ってしまった。
見よ! さきごろまでは、何一つ入れてないがらんとした空き部屋だったのが、今はどうであろうか。その口径、およそ五十センチに近いと思われる巨砲が、彼の塗りこんだ漆喰の上に、どっしりと据えられてあるではないか。それは主力戦艦の主砲よりはるかに長さは短いが、それでも砲身の全長は五メートル近くもあった。砲の胴中は、基部において直径が一メートル半ぐらいあった。