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そめきちのしゅぼん

染吉の朱盆

国枝 史郎

「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,824 字 · 35 页

青空文庫

這入りは這入ったが出て来たかも知れねえ」

そこで屋敷をもう一度巡った。出たか出ないかは解らなかったが、少なくも「出た」という証拠はなかった。

表門、裏門、くぐりの戸、そいつを押しても見たけれど、内から閂でも下ろされているのか、貧乏ゆるぎさえしなかった。

「さてこれから何うしたものだ?」

這入ってみようかとも考えた。

「とんでもねえ」

と直止めた。

「あの岡八の兄貴さえ、呑み込まれた恐しい屋敷じゃァねえか。いかに昼でも俺等一人で、踏ん込んで行くなァ度胸がよすぎる」

「帰って人数を連て来よう」

急いで引っ返した半九郎、夜になるのを待ち受けて、十数人の乾児を連れ、お縫様屋敷へ忍び込んだ。

何を彼等は見ただろう。

九

命を助けられた岡引の岡八、家へ帰って正気づくと、

「もう一度あそこへ行って見てえものだ」

真ッ先にこういったものである。

それから又もトロトロと眠った。

すっかり元気が恢復すると、またノッケにいったものである。

「支那の古事にあるっていうが、ありゃァ日本の纐纈城だなあ」

で、それから話し出した。

「半九、お前にゃァ何んといっていいか、半分はお礼、半分は怨みだ。