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ざくろ

柘榴

山本 周五郎

「サン写真新聞」サン写真新聞社、1948(昭和23)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,342 字 · 25 页

青空文庫

松室には病身の姑がいた。ごく口数の少ない人で、もう二年ばかりひき籠ったきりだったが、このひとが真沙の様子に気づいたとみえ、さりげない事に託して色いろ話して呉れた。それでともかく訳のわからない恐怖は消えたが、その言葉のなかにあった「おんなという者のつとめだから、――」という表現がつよく頭に残った。どんな美味でも、それを喰べることが義務になったばあいには、食欲は減殺される。精神的にも肉躰的にも、余りに若かった真沙には、恐怖に代ってのしかかった義務の観念が新しい苦痛となり、抑えようのない厭悪感となった。……昌蔵がもう少し違った性格だったら、それでも破綻を避ける機会はあったかも知れない。然し彼自身も二十四歳という年にしては世情に疎かった。家系の落魄に対する卑下感から、その結婚を過大に考えすぎたらしいし、それだけ真沙への愛情も激しくいちずになったようだ。

「真沙はおれが嫌いなのか」彼はよくこう云って真沙の両手を掴んだ。「こんなに真沙を好きなおれの気持が真沙にはわからないのか。正直に云って呉れ。どうしてもおれが好きになれないのか」

「おれはいつまで平徒士ではいないよ」