轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ざくろ
柘榴
山本 周五郎
「サン写真新聞」サン写真新聞社、1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,342 字 · 25 页
きっと出世してみせるからね」固く縮めた妻の肩を抱きながら、思い詰めた調子で彼はこう誓う。「こんなみじめな生活とはもうすぐお別れだ。真沙が妻であって呉れさえすれば、私はどんな事でもする。なんでもありあしない。もうめどはついているんだ」
十月に姑が病死した。霜の消えてゆくような静かな死だった。臨終のとき姑は、枕元に坐っている昌蔵をつくづくと眺めた。それからその眼を真沙のほうへ移し、暫くこちらをみつめていたが、やがてそのまま瞼を合わせた。それは、云い遺したいことがあるけれど、云ってもしょせんはだめだろう、そういう意味に真沙にはうけとれたのである。――昌蔵はみれんなほど泣き悲しんだ。然もそれは愛情の深いことを示すより、感情の脆さと、神経の弱さを証明するようで、真沙には寧ろ眼をそむけたい感じだった。
年を越えて二月はじめのこと、とつぜん仲人の戸沢数右衛門が訪ねて来た。下城の途中だとみえ、継ぎ上下で玄関に立ったまま「松室は帰ったか」と訊いた。そしてちょっと考えてから、「では帰ったらすぐ私の家へ来るように」と云って、そのまま玄関から去った。
昌蔵は帰らなかった。