轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,933 字 · 27 页
恋の九分九厘は黄金の前には、脆くも挫けるものであった。しかし、後の一厘の恋は、いわゆる選ばれた恋であって、どんな物にも挫けない。選ばれた人の運命は、大方悲劇に終るものであった。それは浮世の俗流に対して、覚醒の鼓を鳴らすからで、たとえば遠い小亜細亜の、猶太に産れた基督が、大きな真理を説いたため、十字架の犠牲になったように。……で、お杉と三之丞との恋は、選ばれた人の恋であった。反すことの出来ない恋であった。
将軍家斉は風流人、情界の機微に精通した、サッパリとした人物であった。お杉に三之丞がなかったなら、恋さないでは居られなかったろう。
後宮の佳麗三千人、これは支那流の形容詞、しかし家斉将軍には事実五十人の愛妾があった。いずれもソツのない美人揃い、眼を驚かすに足るものがあったが、しかしお杉に比べては、その美しさが及ばなかった。で、家斉は溺愛した。しかるに日を経るにしたがって、家斉はお杉の心の中に、秘密のあることに感付くようになった。相手を愛するということは、相手を占有することであった。愛は完全を要求める点で、ほぼ芸術と同じであった。占有出来ないということは、愛する人の身にとって、堪え難いほどの苦痛であった。