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りゅうえいひろくかつえぐら

柳営秘録かつえ蔵

国枝 史郎

「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,933 字 · 27 页

青空文庫

「さあこれからどうしたものだ。せめて首だけでも葬ってやりてえ。……それにしても一体この侍、どういう身分の者だろう。何だか悪人たア思われねえ。……お杉様と云ったなア誰の事だろう? まさか浅草の赤前垂、お杉ッ子じゃアあるめえが。……まあそんなこたアどうでもいい。さてこれからどうしたものだ」

鬼小僧はちょっと途方に暮れた。

夜をかけて急ぐ旅人でもあろう吾妻橋の方から人が来た。

「うかうかしちゃアいられねえ。下手人と見られねえものでもねえ。よし」と云うと鬼小僧は、侍の片袖を引き千切り、首を包むと胸に抱き、ドンドン町の方へ走っていた。

数日経ったある日のこと、東海道の松並木を、スタスタ歩いて行く旅人があった。他でもない鬼小僧で、首の包みを持っていた。

「葬り損なって持って来たが、生首の土産とは有難くねえ。そうそうこの辺りで葬ってやろう。うん、ここは興津だな。海が見えていい景色だ。松の根方へ埋めてやろう。……おっと不可ねえ人が来た。……ではもう少し先へ行こう」

で、鬼小僧は歩いて行った。

爾来十数年が経過した。

その頃肥前長崎に、平賀浅草という蘭学者があった。傴僂で片眼で醜かったが、しかし非常な博学で、多くの弟子を取り立てていた。