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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
「国民新聞」1926(大正15)年1月5日~15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,933 字 · 27 页
「さあ今度は何にしよう? うんそうだ鳥芸がいい。まず鳥籠から出すことにしよう」
キッと空を見上げたが、頭上には裸体の大公孫樹が、枝を参差と差し出していた。
「おお太夫さん下りておいで。お客様方がお待ちかねだ」
こう云って招くような手附をした。
と、公孫樹の頂上から、何やらスーッと下りて来た。それは小さな鳥籠であった。誰が鳥籠を下ろしたんだろう? それでは高い公孫樹の梢に、鬼小僧の仲間でもいるのだろうか? それに洵に不思議なのは鳥籠を支えている縄がない。鳥籠は宙にういていた。これには見物も吃驚した。ワーッと拍手喝采が起こった。鳥籠はスルスルと下りて来た。しかし下り切りはしなかった。地上から大方一丈の宙で急に鳥籠は止まってしまった。
「あっ」と驚いたのは見物ではなくて、太夫の鬼小僧自身であった。
「どうしたんだい、驚いたなあ」
呟いた途端に見物の中から、
「小僧、取れるなら取ってみろ!」
嘲るような声がした。
2
鬼小僧はギョッと驚いて、声のした方へ眼をやった。鶴髪白髯長身痩躯、眼に不思議な光を宿し、唇に苦笑を漂わせた、神々しくもあれば凄くもある、一人の老人が立っていた。