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かきのきのあるいえ

柿の木のある家

壺井 栄

「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页

青空文庫

フミエたちは小さいときから、年中、この柿の木の下が遊び場でした。家の裏口の方が表通りへ近いので、出かけるにも、かえるにも、たいてい裏口からでした。裏口の戸を開けると、もうそこの屋根びさしの上まで、柿の枝はのびているので、柿の木は家の中がまる見えのわけです。学校へゆくにも、井戸ばたへゆくにも、物置へゆくにも、柿の木の下を通らねばなりません。人のよく通るところへ、柿は植えるものだそうです。根本をよくふまれると柿は丈夫になるということです。柿の木の下をいったりきたり、一家は毎日、柿の木に見守られた日々をおくっているわけです。柿は、おじいさんが子供だった日から、しらがになって、この木の下で倒れた日までのことを、見ていたわけです。だから昔、おばあさんがおよめにきたことも、そしておとうさんや三太郎おばさんが生れたことも、その三太郎おばさんがだんだん大きくなってお嫁にいったことも、フミエたちのおかあさんが、三太郎おじさんの家からおよめにきたことも、そうしてフミエや洋一が次々と生れたことも、みんな見ていたわけです。いつか洋一がだだをこねて、この柿の木にしばりつけられたことも、柿の木はおぼえているでしょう。